去る6月3日(金)、当事務所にて平成23年度第2回AIF経営研究会が開催されました。第一部では『成果を出す経営者がやっている7つのこと』と題し、人事育成や組織運営について当事務所顧問先の株式会社JOYWOW 取締役会長 阪本啓一氏にお越し頂き、講演をいただきました。
また今回の経営研究会では、6名の方に新規でご参加いただきましたので、簡単ではありますがご紹介いたします。
阪本氏の今回の講演では、7つのことに焦点をあて、経営で成果を出す為のポイントについてお話頂きました。
そのテーマに入る前に、現在のビジネス環境について次のような見方をされました。
「現在のビジネス環境は刻々と変化し、今まで当然と考えられていた認識や常識は変わり始めている。例えばツイッターやフェイスブック等の普及で広告宣伝等の企業活動に変化が生じた。今までのような"組織間の繋がり"からソーシャルネットワークの普及による"個人間の繋がり"が強くなり、ネット上での個人の発言の影響力も大きくなった。従って、今後は会社に帰属する"個人の成長"こそが会社の成長となる。」
では、具体的に阪本氏が提唱した7つのことについて、見ていきたいと思います。
経営理念をしっかりと作る
経営理念は行動を促すものでなければなりません。つまり『○○を○○する』というように、経営理念が行動指針を示すのが良いようです。
餃子の王将では『人を育てる』を理念とし、人事担当の役員が社内教育を一手に引き受け、接客や調理等の行動を見せて正しい接客や調理を教えているそうです。経営理念が明確な「行動指針」になっているといえます。
商品や業界ではなく、提供価値で考える
今までは売っている商品や製品をもって『○○屋』『○○業』と自社を定義付けしていたと思いますが、これからは顧客の「購買動機」が競合を生む時代となっています。
例えばマクドナルド。同じハンバーガーを売るモスバーガーは「同業」ではあります。しかし、顧客の購買動機として"商品を早く提供してほしい"というニーズがあった場合、マクドナルドと競合してくるのは、牛丼チェーンや立ち食い蕎麦屋などの飲食店となるのです。
つまり、競合相手は同業他社だけに留まらなくなってきており、今後は「購買動機」から自社の提供価値を考えた戦略が必要になってきます。
提供価値を常に見直す
顧客のニーズは日々変化しており、可変的なものです。現代において、その変化はとても早くなっています。シャッター通り商店街などはこの変化に対応できず、顧客に置いていかれた典型です。
また牛丼業界では顧客のニーズが分からなくなり、低価格路線へと業界全体が動いています。価格競争が始まった時点でその業界は成長期から成熟期へ入っています。
提供価値を常に見直している例としては、養命酒が挙げられます。養命酒は江戸時代からあるそうですが、時代に合わせ、原料の配合を変えるなどして対応しているそうです。
常に顧客のニーズを探し、それに対応することが重要です。
人を育てる
会社での人員構成は2−6−2という能力が優秀、普通、普通未満という構成比で出来ていることがほとんどです。この普通以下の人を辞めさせても、新に2−6−2の普通以下の2が生じます。では、この普通以下の2を成長させるにはどうすればよいかが?のテーマです。
ある製薬会社では、この成績のわるい2の人に対して、『Super Skill Transfer(名人芸の移植)』という手法を用いました。これは、優秀な人が仕事の仕方を教えるというものです。これにより成績の悪い人は仕事の成果を上げることができるようになったそうです。別の例では、食品会社で営業成績のふるわなかった社員を管理部署から開発部署に異動したところ、成果を発揮した事例もあるそうです。
人を育てる上では、その人の強みを活かすこと、大木を育てる意識を持つこと、また仕事ではなく貢献でとらえるということが重要です。
時間を味方にする
経営者の方は日々の業務が多く、時間がいくらあっても足りないような状況に陥りがちです。
まず、時間を味方につけるために日々の時間の使い方を記録し、見直すことが重要です。記録することで時間の使い方が見えてきます。生産性を高めるには、優先順位と劣後順位をつけることです。劣後順位とは、やらなければならないことから、その中で後回しにしてよいものを選び出すことです。時間に追われるのではなく、時間を味方につけることです。
集中する
これは、
とも通じるところですが、今やらなければならないことを見極め、集中することで生産性を高め、利益を生みます。
意思決定力を磨く
良質な意思決定力は天性ではなく習得できるスキルです。
物差しを決め仮説を立てます。
そして異論を歓迎することです。
異論が出ることの効果は、選択肢や代替案が出る事や仮説に対して想像力を働かせることになります。また組織の常識は社会の非常識という場合もありますので、意見を求める事で組織の囚人とならないというような効果もあります。
7つの焦点について、具体例を交えながらの講演は分かりやすく、参加者の方からも好評でした。
この場を借りてお礼を申上げます。
阪本様、どうもありがとうございました。
平成23年度 第1回AIF経営研究会 報告
去る3月4日(金)、当事務所にて平成23年度第1回AIF経営研究会が開催されました。第一部では『経営者のためのメンタルヘルス入門2【人づきあいが苦手な若手社員-どう理解し接したらよいか?-】』と題し、東京慈恵会医科大学附属第三病院副医院長、精神神経科教授の中村敬先生にお越し頂き、講演をいただきました。
また今回の経営研究会では、新たに2名の方に新規でご参加いただきましたので、簡単ではありますが、ご紹介いたします。
今回の中村先生を講演では、「人づきあいが苦手な人」のいろいろなパターンを精神医学的に理解し、適切な接し方を探っていく、という構成でした。
中村先生は、現在の社会環境は急速に構造変化してきており、職場その他の至る所で人間関係が希薄になっている。そして、これに起因すると思われる様々な事件・問題が社会現象として数多く
起きている、ということを注視しています。
『将来を担う若手社員をどう育てていくか?』は今まで以上に重要であり、かつ困難な課題になってきたと言えるのではないでしょうか?その中で今回の勉強会では貴重なお話を聞くことが出来ました。
以下、簡単にではありますが、報告させていただきます。
人づきあいが苦手な若手社員との接し方
講師 精神神経科教授 中村敬 先生
【近年の社会関係の変化】
近年、多くの子供たちが"独自のスペース"を確保して住むようになっています。
これは家族を取り巻く環境の変化、例えば少子化・独立した子供部屋の増加・学校側の責任問題の回避・異なる年齢の子供たちが遊ぶ光景の消失・などが起因していると考えられます。また、これらの生活環境の変化に加え、インターネットや携帯電話の普及による対面的かかわりの減少も大きな要因と考えられます。
1970年代まではかろうじて学校以外の人間との関わり、カウンターカルチャーも含め1つの社会関係としての受け皿がありましたが、現在はなくなりつつあります。
総じて若者たちは、人づきあいの経験値が乏しくなってきていると考えられます。
【人づきあいが困難な若者のタイプ】
人づきあいのスキルがやや乏しい方のタイプ
人前で緊張しやすい人
批判を過度に恐れる人
自分のやり方を頑なに守る人
他人に関心が乏しい人
これらの事例に該当する障害としては、社交不安障害(DSM-?)、回避性パーソナリティ障害、強迫性パーソナリティ障害、広汎性発達障害(自閉症スペクトラム)があります。
特に最近ではアスペルガー障害(アスペルガー症候群)が注目されており、症状としては軽いものの大人がなる事で有名とのことです。いまだ診療内科でも判断が難しいといわれます。
【周囲の対応の原則】
一般的な価値基準だけで判断せず、その人なりの物の見方や行動スタイル理解する。
個性を個性として認め、必要以上に集団行動を求めない
注意するときは、人格ではなく具体的な行動に絞ること。
社会での経験値を高めていけるような配慮を人前で緊張しやすい人、批判を過度に恐れる人、批判を過度に恐れる人、自分のやり方を頑なに守る人、他人に関心が乏しい人それぞれの人に対する対処法を話して頂きました。
【終わりに】
中村先生は、「不安障害、パーソナリティ障害、発達障害などの障害は、いわゆる"健常者"と連続した傾向にあり、適度であれば社会に十分適応し得る。"障害"のレッテル貼ったりはせずに、対応を工夫する事が最も重要なことです。」と締めくくりました。
2010年AIF経営研究会のご報告